飲食店で起きるPDCAサイクルが改善に結びつかないケース3
■「Plan」設定が甘い
PDCAサイクルは、起点である「Plan」段階において品質・業務改善のためにこれから準備すべきこと、期間、タスク、コストなどを細かく設定しますが、
本来その前段階として存在すべき「現状の把握」「問題点の露出」「調査・分析」「仮説を立てる」などといったファクターも「P」ひとつの段階に暗に含まれています。
これは他産業の経営改善の場でも当てはまることかもしれませんが、「P」は得てしてコストが発生し易いもので、
達すべき改善目標次第では「Plan」確定までにも、多大なコストを要し、時に「Do」に進まない膠着状態にも陥りがちになるものです。
一方で、飲食店のコンサルティングの現場に立つと、
本来「Plan」の前段階として網羅されるファクターを意に介さず、
非常にアバウトに、かつ直感的に「Plan」設定がなされているケースが間々見受けられます。
仮に、前述のケースを本来の型だとすれば、それとは逆に、現状の把握や仮説を立てるといったプロセスを踏まない分「Plan」化は非常に速い、
しかしながら、あまりに「Plan」自体が曖昧に設計されていることで、いざ行動しようとしても何をどのように「Do」して良いのか判然とせず、
改善したいとの願望だけが独り歩きしてしまうがために、そこで何をすればいいのか改善するのか判然としない停滞が生じる。
また、何をしていいのかわからず停滞する状況には留まらず、なんとかしようと直感で「Plan」化し闇雲に投資することがさらなる迷走を招き、
スパイラルダウンが生じる。飲食店の経営改善が自社で為し得なくなる一因です。
例えば「○%売上アップ」を目標に立てる→主力商品の値下げをする→売上微増で経営改善できたと結論付ける。
一方、販売点数は上がるが労働コスト・原価率も上がる→一時的に上がった売り上げが元の水準に戻る、
しかし売価設定は離客が怖いため戻せない、労働コストと原価率は上がったままに・・・この手の破綻例が非常に多いと感じます。
「Plan」の設定はサイクルの起点として非常に重要です。「Plan」設計はもちろん、設計後適切に行動、そして検証・評価が行えるよう、
「現状の把握」「問題点の露出」「調査・分析」「仮説を立てる」といった、本より「P」に潜在するファクターに目を向けておくこと、
そのためのデータ収集を、営業のなかで常態化しておくことが必須です。
特に規模の小さな飲食店ではありがちですが、経営者自らが厨房業務や接客に追われるようであれば、
日報月報をスタッフに記入させられるよう指導する、POSレジを導入しておく、会計事務所などに決算書類のとりまとめを委託する
など、自身の手から離れたところでも常にデータ収集できるよう、体制を構築しておくことが大切です。
極論で言えば結局のところPDCAサイクルも、用い手次第で良くも悪くもなるものに変わりなく、
飲食店でも①「Plan→Do→自己満足」型に陥る、②「Check」機能の不全、③甘い「Plan」設定、これら3つのケースに嵌らないよう
運用することが出来れば、PDCAサイクルも経営改善を促進するうえで、それなりに有用な改善プロセスだと思います。
嵌らないコツは各項の通りですが、その上で、とりわけ飲食店の経営改善は「P」→「D」の連続にこそ意義があるものと考えています。
「Do」の結果が望むものではなかったとしても無駄なものではなく、その「Plan」設定から「Do」した結果、
どのような影響をもたらしたかをレポーティングしておき、次の「P」のために蓄積していく。
この作業、即ちレポーティングの蓄積がその店の財産の構築であると考えることが出来るか否かが、
サイクルの成否の分岐点であるように感じています。常にデータ収集できるよう体制を構築しておく。
経営改善の一歩として推奨します。