まず、既に周知される通り、クラウドファンディング(Crowdfunding)とは、群衆(Crowd)と資金調達(Funding)を組み合わせた造語で、
不特定の人がインターネット経由で知り得た情報や、知人や顧客が直接的なつながりを経て支援者となり、組織や個人に資金提供や支援を行うことができる仕組みのことです。
飲食店経営者の観点で言えば、自らのアイデアや自店のコンセプトへの支援者と資金が集められる、第3の資金調達手段として利用が可能な仕組みと言えます。
では、端的にクラウドファンディングが飲食店の経営改善にとって有用なツールになり得るか否か?の問いに答えるとすれば、我々コンサルタントの答えは「Yes」です。
手元の資金が乏しく、リスクを負ってまで改善のための行動に移せないといった、不振に陥った飲食店によくあるシチュエーションを鑑みれば、
手持ち資金が0でも資金調達が可能なプロセスが確立されたことは非常に意味があることです。
また、クラウドファンディングは資金調達の手段としてだけでなく、マーケティングやプロモーション、ブランディングの手段として有用であることも加味すれば、
コントロール可能なデメリットは些細なものだと考えています。
一方で、クラウドファンディングが経営改善にとって有用な仕組みであったとしても、そのプロジェクトの成功が経営改善に直結するかどうかの問いに答えるなら、
当然のことながら答えは「No」です。であるからこそ、「No」である理由と、クラウドファンディングを用いて飲食店経営を改善に導くポイントを押さえておくことを推奨します。
実行者がクラウドファンディングのプロジェクトの成功をスタートと考えるのではなく、
プロジェクトを立ち上げた瞬間から改善へのタスクはスタートすると考えることが出来るのかどうか、
回りくどい言い方ではありますが、自店の経営を改善に導くための「秘訣」は、クラウドファンディングがたとえ有用であったとしても、
改善を支援ありきで考えないスタンスと、改善に結びつける行動力にあります。
ご縁があって、我々コンサルタントが支援させていただく飲食店の多くは、集客に焦る実情と共に、内部に何らかの失客に関わる課題を抱えています。
もちろん、一言で経営改善と言ってもスタートラインは飲食店ごとに異なりますので、経営状態が堅調であり、さらに上を目指し改善を望むようなポジティブなケースを除き、
現状の業績に一抹でも不安を感じる飲食店は、前者同様失客に関わる内部要因を大なり小なり抱えていると考えて間違いないでしょう。
このような状況のままプロジェクトが成功し、集客の足掛かりを仮に得たとしても、新たに来店されたお客様にも満足を提供することができずに、
失客を繰り返すことは必定です。即ちこれが先の問いの答えが「No」である所以です。
新規客の集客を試みるのであれば、プロジェクトの成功から動き始めるのではなく、プロジェクト立ち上げを経営改善のスタートと位置付け、
店自体の失客につながる内部要因を徹底的に排除し、QHCAのブラッシュアップも並行して実施する客観的な視野と行動力が欠かせません。
顧客の満足度が高まれば経営の改善はついてきますので、プロジェクトの成否にかかわらず、立ち上げを〝きっかけ〟として改善のサイクルを回し始めることができるかどうかが、
クラウドファンディングで飲食店経営を改善に導くポイントと言えるわけです。
説教じみていますが、立て直しを要する既存飲食店の場合、プロジェクトの立ち上げに満足してしまっていたり、立ち上げれば自動的に資金が手に入る仕組みであると考えていたりしては、
失敗は目に見えています。経営改善は資金が無くとも可能なタスクはたくさんあるはずです。新たに集客したお客様の来店時には、より満足が得られるように内部改善を併せて進めることが重要です。